夏 色 の 風





「どうしよう…」


「何が?お金ないなら、貸そっか?」




無事家に帰りつき、リビングの

ソファーでぐったりしている直之に

暢気な母親はケタケタ笑う。




また貸しをつくらせて、

今よりもっとひどくパシるつもりだろう。

なんて恐ろしい。やはり悪魔に違いない。




直之は重たい身体を引きずり、

自分の部屋の扉を開けた。

ベッドに倒れ込み、ジーンズの

尻ポケットから携帯を引きずり出した。




――どうしよう…




嘘も方便で勝手に早苗を

彼女と言ってしまった。

それで済めばよかったものの、

話しをさせろと誤った方向に進み

粘る輝を黙らせるために了承したが、

まさか早苗本人に頼む訳にもいなかない。




その前に、早苗に片想いする亮佑に

殺されてしまうと思う。




元カノには、家に帰る道すがら

連絡を取ってみたがキレられて終わった。

確かに、他人から見ればおかしな話しで

直之自身も混乱していて、

人に説明するのも難しい。




右手をわずかに上げる。

その腕には、先日4人お揃いで買った

革のブレスレット。




大きくため息をつき、

頼みたくなかった"あの人"の

アドレスをひらく。