直之は、どう答えれば
厄介事にならずに済むか考えていた。
真実を告げれば、
直之には想い人はいる。が、
付き合っている人はいない。
輝サイドにとっては絶好のチャンスだ。
となると、やはり…。
ここは"嘘も方便"だろう。
「付き合ってる人なら、いますよ」
作り笑いを浮かべながら、
直之は嘘をつらつら並べた。
「今は遠距離恋愛中なんですが、
彼女がこっちの大学に進学すると
言ってくれているので。
まぁ、まだ高1なんで先は長いですが」
チラリと輝を見ると、悔しそうに
顔を歪ませている。
古山田さんは、直之の嘘に気付いたようで
『嘘をつかせて申し訳ない』
という表情を見せた。
「お付き合いされている方が
いらっしゃる…?」
強い視線を向けられる。
「それは、本当に事実なんですの?!
事実なら、そのお方の
写真を見せて下さい!!」
予想外の展開だ。
古山田さんも驚いている。
時間を稼ぐよう、古山田さんに
視線だけで伝える。
すぐに意味を理解したのか、
再びお説教が始まった。
その隙に携帯のデータフォルダを開き
使える写真はないか探す。
元カノを使う考えがあったものの
同じ制服だったり、落書きから
地元の人間だったりするのがバレてしまう。
本気で困り、財布の中も確認する。
プリクラとか、偶然たまたま
入っていたりしないだろうか。
…しなかった。
だが、起死回生。"あの写真"が
お札を入れるところに入っていた。
心の中で2人に謝りつつ、
テーブルの上に置いた。
「コレが、彼女です。
こっちが彼女のお兄さん、祖父、祖母です」
"あの写真"――それは、
夏祭りの夜に撮ったもので
直之の他に、亮佑と早苗、
ばあちゃん、樽澤さんが写っていた。

