また、ということは
これまでもあったのだろうか。
そして今、普通にサラッと
"お嬢様"とか"この店の店長"とか
随分聞き慣れない言葉が出てきた。
「あの…科野さんは、
このお店の店長で、お嬢様なんですか?」
確かに図書館で見かけたとき、
お嬢様校で有名な私立の女子校の制服だった。
それに、今着ているのは女性と同じ、
黒いワイシャツとパンツ、
ベージュのエプロンだ。
ということは、そういうことなのか。
「まだ、お話しておりませんでしたね。
わたしは、某有名企業CEOの
孫娘なんですの。このお店は、
会社の持ち物なんですけど、
駄々をこねたら店長という
肩書を頂きました」
再び、直之の脳みそが機能を停止した。
次元が違いすぎてよく分からない。
というか、分かってはいけない気がする。
これでいいのか日本経済。
駄々をこねたらお店が貰えるって、
そんなんで大丈夫か日本経済。
「す、すごい人だったんですね…」
「わたしはすごくないんです。
周りがすごいだけで」
確かにそんな気もする。
話しによると、女性の方は
古山田(コヤマダ)さんというらしい。
輝のお目付け役兼喫茶店店員で、
かなり大変そうだ。
「それで、お付き合いされている方は
いらっしゃるのですか?!」
「へっ…?」
話しが完全に逸れた!と心の中で
ガッツポーズをして油断していた。
どうしようか考えている間に、
古山田さんが輝に説教している。
もちろん、聞く気はゼロに近いが。

