夏 色 の 風





一口アイスコーヒーを飲んで、

輝は上目遣い気味に直之を見た。


どこかの誰かさんと違って

推定Cカップはあるだろう胸が

ちょっぴり強調されている。

これをされたら、ほとんどの男子は

コロッとやられちゃうだろう。




「ところで…何かお困りでしたか?」


直之は思い出してハッとした。

本来の目的を、もう少しで

忘れるところであった。


「ぁ、実はその…。

この店オリジナルブレンドの

コーヒー豆5袋を探してたんですけど、

在庫が3袋しかないみたいで」


「申し訳ありません…。

あれは人気商品ですから入荷しても

すぐ無くなってしまうんですの。

専門のスタッフが1つずつ手作業で

袋に詰めておりますので、

少し時間がかかるんです」


申し訳なさそうに眉を八の字にする。

その仕草も、男心をくすぐった。


「もしよろしければ、入荷した際

メールでお知らせいたしましょうか?

そうすれば、何度も店に通わなくても

すぐにご購入いただけますわ」


「あー…、じゃ、そうします」




それならば、あの母親の

皮を被った悪魔も納得するだろう。

すぐにメアドを交換し、

先程の女性を呼んで3袋分の

会計をしてもらった。




「ところで…」


会計待ちをしている間、

輝は両頬を抑えながらクネクネした。

直之はアイスコーヒーを飲みながら、

頭上に?マークを並べる。


「お付き合いされている方は、

いらっしゃいますの?」


キャッ、と頬を赤くして

輝は一人照れている。

直之は飲み込んだアイスコーヒーが

気管に入りそうになりむせる。

慌てる輝を片手で制し、直之は

図書館の時と同様に、完璧な作り笑いを

顔面に貼付ける。


「付き合っている人…ですか。

それを聞いて、あなたに得でも?」


サラッと普通なら傷付きそうな台詞を吐く。

だが、輝は"普通"ではなかった。