少女は、お嬢様校で有名な
女子校の制服を着ていた。
雰囲気は大人っぽいが、
キョトンとした顔で直之を見る視線は
かなり子供のように思えた。
「どの本を取りたいんですか?」
「ぁ…取って下さるんですか?」
「えっ…あ、はい…」
「一番上の棚の、背表紙が水色の本ですわ」
…ですわ?
さすがお嬢様校…と納得しながら、
ひょいっと腕を伸ばす。
おおよそ140cmの少女には辛い高さだが
170cm超えの直之には楽々と取れた。
背表紙にはアルファベットのような
文字が書かれていて、表紙も見てみたが
それが何の本か直之には分からなかった。
「コレで合ってますか?」
一応確認すると、少女は嬉しそうに
本を手に取った。
「ありがとうございます!
お陰で助かりました。何か、お礼を…」
「いや、別にこれくらい平気ですよ。
それじゃ」
お礼なんて大袈裟だ。
直之は引き留めようとする少女をかわし
図書館から逃げるように去った。
悪いことをしたわけではないが、
何故か悪い予感がしてならない。
だが、母親の"絶対命令"は遂行した。
これでやっとクーラーの下で漫画が読める。
途中でコンビニでアイス…
しかも、普段は手を出せない
ハーゲ○ダッツでも買って帰ろう。
そう考えると、もう一刻も早く
家に帰ってグータラしたくなってきた。
行きで感じた暑さなど忘れ、
直之は早足で帰路を急いだ。

