「うん、さっきばあちゃんに聞いた。
連絡事項って、何?」
ふぅ、と息をつく。
早苗にバレないように、胸を抑え
もう一度小さく深呼吸をした。
「たいしたことじゃないんだ。
ただ、言わないと俺が
後悔しそうだったからさ」
「うん?」
今だ、今だ、今だ…!
今しかないんだ、俺!
心の中で深呼吸。
さぁ、行け。壱逗 亮佑。
どんな結果が待っていても
今このタイミングを逃すなよ…!
「早苗、俺と最初に
会った時のこと覚えてるか?」
告白の言葉は、出て来なかった。
代わりに、ココで過ごした日々を
思い出して、噛み締めていく。
「俺、来たばっかりで
胡瓜がどこにあるか分からなくてさ。
1人で騒いでたんだよな。
そしたら急に早苗が現れて、
胡瓜を差し出したんだよ。
名乗りもしないで家ん中入って
混乱してる俺を無視して晩御飯食べて…。
俺、早苗を"胡瓜泥棒"って呼んでたよな」
思い出しただけで笑えるエピソード。
早苗も、声は出さないものの
思い出に浸っているのか、
わずかに微笑んでいた。
「驚いたのが、雷の日。
俺が勘違いしてダッシュして行って、
早苗に呆れられて、雷鳴り出して
早苗が泣いちゃってさ。
変な感じだったよ。いつもは
ツン75%、デレ25%くらいしか
配合されてないのに。
あの日泣いてた早苗は、確実に
デレ55%はあったね」
これには少し不服…いや、多分
恥ずかしいのをごまかすために
あえて顔をしかめている。

