夏 色 の 風





いつ、切り出そう。




自分から告白したことがない人間は

本当にこういうとき経験不足が身に染みる。




直之ならどうしただろう…

円香ならどうしただろう…




必死にイメージするが、

残念ながら俺の想像力は乏しい。




1つ正しいと思えることは、

円香のようにいきなり"キス"で

気持ちの高まりを現してはいけない。

円香タイプなら、照れ笑い

からの上目遣いでごまかせるが、

男の俺に待っているのは、ビンタか

洋画のような甘い展開だけだ。

恐らく、早苗の場合前者だろう。




「なぁに?また難しい顔して」


「えっ?!難しい顔?

ハハハ、してない。してないってー」


ははははは。

…今度こそ逃げられそうにない。

ハヤシライスはあと3口しか残っていない。




「あのさ…別に、難しいこと

考えてたわけじゃないんだけど…。

もう知ってるかもしれないけど、

俺…明日か明後日に帰るんだ。

で…帰る前にちょっとした

連絡事項があったりなんかして…」




今しかない。

心臓が、ドックンと音を立てた。