夏 色 の 風





ふぅ、と息をつく。

シスコン兄貴のせいで無駄に疲れた。




「亮佑って先輩と仲いいんだね!

しかも応援?されてるじゃん!

シスコンお兄様公認なんて、やるぅ」


「喜べねぇよ!!

手を出したら殺す、

離れたらもっと痛い目に合う、

どっちなんだよ!

どっちにしても俺の命ないじゃん!」


「あっはは、いいじゃない。

反対を押し切ってこそ、

愛は燃え上がるのよ、メラメラと。

やぁん、ロミジュリ?」




もっと喜べない…

ロミオとジュリエットって結局

どっちも死んだような…。はは…




「何かあったらすぐ連絡してよね。

明日何時頃発つの?」


「分かんねぇ。母さんは

午前中に着くみたいだけど。

あの人のノリとテンションじゃ、

下手したら明後日になるかもしれないし」


「何よそれー!

間に合いそうなら見送り行くね。

部活あるから無理かもしれないけど。

…まっ、それより先に、

今夜大仕事があるんだから。

しっかりね!!」




お互い立ち上がって、ハグをした。

背中をバンバン叩かれる。

痛いけど、なんだか嬉しい痛みだ。




「ファイト!亮佑!」


「あぁ、頑張って来ます!!

ほんっとに色々ありがとな」


笑った円香の耳元で、

最後の言葉を呟いた。




「円香も頑張れよ」




真っ赤にさせ、怒ったような顔で

円香は俺の胸をドンっと押した。




「亮佑のくせにっ」




円香の声が、ちょっぴり悔しそうだ。

俺は、円香に貰った元気と勇気を胸に

右手を大きく振った。




色々あったこの河原も、

これでお別れかもしれない。




手を振り返す円香と、

透き通った水が流れる川を

目に焼き付けてばあちゃん家に帰った。