「ナエちゃんは、淋しいんだよ」
淋しい?
思いもよらなかった言葉に、
一瞬ポカンとした。
早苗が?淋しいって?
「最近あたしは亮佑に引っ付いてるし、
亮佑も畑仕事抜け出して、あたしと
会ったりしてるでしょ?
で、自分とあまり絡んでくれない。
だから淋しいんだと思う。
特に、ナエちゃんは特殊な環境で
育ったわけだからさ」
一度立ち上がって、円香は
川の流れを見つめながら言った。
「簡単に言うと、亮佑は
嫌われたんじゃないよ。
淋しさのはけ口として八つ当たりされて、
それをまともに受け取っちゃって
ナエちゃんを避けて…っていう
悪循環だよね、これは。
玉砕はまだしてないってこと。
明日帰っちゃうんでしょ?
じゃ、今夜がラストチャンスじゃん?」
ニカッと笑う。
「まじ…?」
「嘘や冗談で言わないよ」
「俺まだ…玉砕してないの?!」
「そっ。お主の勘違いである」
はっ、恥ずかしいぃぃー!
穴があったら入りたい。
いや、むしろここに穴を掘っていいですか
ってレベルの恥ずかしさ。
円香や直之を巻き込んで、
とんだ思い違いをしてしまった。
「仕方ないって。
ナエちゃんて分かりにくいもん。
3年以上一緒にいるあたしも
たまに全然分かんなくなるし。
それより、喜んでいいと思うけど?」
恥ずかしぃぃ、と頭をかいていた俺は
その言葉に顔を上げた。
「1つ、まだチャンスはある。
2つ、淋しいを言い換えると嫉妬。
女の子が嫉妬するのは"大事な人"にだけ」
円香の、下手くそウインクつき。

