「おーい、円香ーぁ」


必死に走って河原に行くと、

円香は自転車を停め、階段に座って

俺に手を振っていた。




「亮佑、遅ーい」


「仕方ねぇだ、ろぉがっ!

畑仕事してっ、シャワー浴びてっ、

携帯見てダッシュして来たのっっ」




ぜぇぜぇ言うと、円香は笑って謝る。

本当に円香と一緒にいると

玩具にされている感が否めない。




「ほら、座って座って。

お茶飲むー?」


「おぉ、ありがと」




ペットボトルのお茶を受け取る。

立石が部員に『お疲れ様』と

渡した物だという。




「いいのか?!」


「うん。ナエちゃんの分だし」


「ぁー、要らないって渡された物が

円香経由で俺に来たわけだ」


「そっ。あたしが立石先輩から貰った物を

人にあげるわけないじゃなーい!

例え亮佑でもあげないよ」




ですよね…。

いや、だからびっくりしたんだけど。




「そういえば、俺明日帰ることになった」


「えっ……いきなり何?!

冗談にしてはキツイよ?!」


「冗談じゃねーって。

さっき母さんから電話あった」


「嘘…亮佑がいなくなるの…?」




そんなこと言われても。

俺にとっては、都会こそ家なわけで。

ココの生活は大好きだけど、

都会には友達がたくさんいる。

それに、早苗と顔も

合わせて貰えないような日々が

何日も何日も続くなら、

都会に逃げてしまいたい…。




ぁあ、俺って本当にダメな奴。