夏 色 の 風





それが分からないから連絡したのに。




「例えばどのように」


『はぁ?!お前は俺の話しを

ちゃんと聞いてたのか?!』




聞いてましたよ。

聞いてて分かんないんだよ。




『はぁ……。だーかーらぁ、

円香が早苗になんで怒ってんのか

理由と原因を聞き出す。

それを受けてお前がどうするか決めんだよ。

つまり、円香が仕事してくれなきゃ

お前は動けないってこと。

下手に謝り倒してみろ?女子ってのは

そう単純な生き物じゃねーからな。

…特に早苗タイプの人間は』




おぉ…中々説得力がある…。

キャンプのとき、本能に任せて

理性を失った男とは思えない。




「なっ、なるほど…

円香が地ならしするって言うのは

そういうことなんだな?」


『そ・う・だ!

1回で理解出来る頭になれ』


「すみません…感謝してます」


『当たり前だろ!あのなぁ、

円香がどんな気持ちで亮佑と早苗を

くっつけようとしてるか分かるか?

っていうか、お前と会う度に

"こういうことがあったの!"って

報告される身にもなってくれ!』




生殺しってやつだろうか。

好きな相手から電話が掛かってきて嬉しい。

が、中身は別の男と会って話したことを

詳細に報告されるだけ…。

相手が知らない相手なら、

腹を立てるだけで済むだろうが

相手はまさかの…俺。




「改めて、ごめんなさい」


『まったくだよ。

頼むからお前は早苗と上手くやってくれ。

円香の見た夢が正夢にならないように』




夢ってなんだ?と首を傾げて

瞬時に思い出した。

俺が病床にいるときに聞かせられた

何故か俺と結婚している夢。




今となっては、立石と早苗が

結婚するという恐ろしい結末は

避けられそうだが、可哀相なのは直之だ。

…夢に登場していない。




『俺って夢に登場することさえ

許されないの…?』


男として激しく同情する。