夏 色 の 風





階段に並んで座る。

キャンプの日の夜を思い出して

少し胸がズキンと音を立てる。




「亮佑、大丈夫。

ここはどーん!っとあたしに任せなさい!」




頼もしげに言った円香だが、

正直不安要素がたっぷりだ。

何故って…

それは、直之と同じ匂いがするから。




「別にもういいよ…

逆によかったんだ、早苗の俺に対する

気持ちを知れたからさ。

本人から直接聞けただけでいいよ」




もう俺の傷をえぐらないでくれ。

ほんの少しでも期待なんかしちゃって、

円香が何かしたことによって

早苗にもっと嫌われたりしたら…。




俺、ばあちゃん家にもう来れなくなる。




「甘い!!!!」


円香はビシッと俺を指さし、

怖い顔で言い放つ。


「亮佑のナエちゃんに対する気持ちは

そんなもんだったの?

あたしは、こんなに諦めの早い男に

フラれちゃったわけ?

もしそうなら、亮佑がナエちゃんを

想っていた気持ちは"恋"なんかじゃない。

"恋"だと錯覚してただけだよ」




円香はそれだけ言って、

「悪いけど、帰るね」と去って行く。

後ろ姿を見送ってから、

でかいため息をついた。




怒られるのも無理はない。

分かってはいるが、

これが "初恋"なんだから

仕方ないじゃないか。

もっと恋愛偏差値が高い人なら

きっとこんなことじゃくじけない。

だけど初心者の俺には、難題ばっかだ。

どこから手をつければいいのか

全く分からない。




…俺にどうしろと…。

ため息は尽きることがない。