夏 色 の 風





「なーんだ。お似合いだと思ったのに」


ズドン、と鉛を心に落とされた気分だ。

ということは早苗は俺のことを

そういう目でしか見ていなかったわけで。




期待はしていなかった。

…いや、していなかったつもりだった。

心の隅では、少し期待していた。

想像していたより、遥かに辛い。




「あはは…そう見えるかー?

俺、直之に殺されたくねぇもん」


早苗は直之が円香に惚れているのを

知っているので、プッと笑う。




よかった、早苗が少しでも元気になって。




「俺、先に戻るな」


「うん」




一歩一歩が重く苦しい。

濃紺の絵の具に、

ラメを散りばめたような空。

キャンプの時は最高に綺麗だと思った。

今はただ、虚しいだけ。





俺は玄関から中に入って、居間ではなく

使っていない方の部屋に入った。




ばあちゃんが時々掃除するので

そこそこ綺麗だったが、足の裏は真っ黒だ。