夏 色 の 風





「お願いだから1人にして…」


今まで聞いたことのないような、

切羽詰まった声だった。




俺がそうさせてしまったんだろうか…




そんな声が聞きたくて、

声を掛けたわけじゃない。

なんでそうやって抱え込むんだろう。

俺は頼りにならないのか?

俺なんかじゃ、早苗の

隣に立つことは出来ない…?




「早苗」


もう一度声を掛ける。

次は無反応だった。


「早苗は勘違いしてる」


やっぱり、無反応。


「俺と円香はそういう関係じゃないし、

それに…お互い好きな人がいるから

励まし合ってるだけだって」




ここで、

『俺が好きなのはお前だ!』

なんてカッコイイ台詞が言えたら、


"外見はフツメン、中身はイケメン、

その名は……壱逗 亮佑!

ただいま見参!(シャキーン!:効果音)"


ってなるんだろう。

残念ながら、そういかないのが

情けないところだ。

頭より身体を動かせ!派なのに

こういう時は頭に頼りたがる。




小さなため息をつく。

何言ってんだか。

俺と円香がどういう関係だろうと、

早苗には関わりのないことだ。

別に弁解する必要なんかないのに。