夏 色 の 風





困った時は。



「そいえば、グレーテル役おめでとう」


「…?!」




こうするに限る。


真っ赤な顔で睨みつけられるけど、

こういうときは笑顔で受け流せ!




「円香から聞いたんだ。

しかも兄と妹の禁断愛だって?

童話のヘンゼルとグレーテルは

何処いっちゃったわけ?

もはや童話の影もないよね」


「…へぇ。

円香に聞いたんだ。

最近仲がいいみたいだけど

正式に付き合うことになったの?」




耳を疑う。

え?俺と円香が?

いやー、ナイナイ。

有り得ないでしょ。

花火大会の時決着ついてるし、

まだ円香はベタベタしてくるけど

『ナエちゃんに当てつけたいんだもん』

とか言っていた。




…どうしよう、

当てつけが裏目に出たパターンだ。

…どうしよう!?




「付き合ってねぇよ。

円香は直之担当だろ?」


ごめん、円香。

そういうことにしてくれ。


「苦しい言い訳ね」




ピシャリ。

円香と直之を盾にしてみたが

あっさりやられてしまった。







どうする、俺。

もう手札は残っていない。