「で、なんで突然そんなことを?」
このままじゃ立ち直れなさそうなので
あえて話しを変えてみる。
「うん?ぁ、そうそう。
あたし部活が演劇部なんだけどね」
円香が演劇部?!
想像してみたけど、ピンと来ない。
円香はお姫様ってキャラじゃないだろー。
「今年の学祭で、
【ヘンゼルとグレーテル】を、
現代風にアレンジして演じるの!
で、演劇部の部長が主役を演じるんだけど、
グレーテル役に抜擢されたのが
ナエちゃんなのよ!
だから隊長として、ナエちゃんの
晴れ舞台を亮佑に見て欲しくて。
学祭は10月の第一土曜と日曜なんだけど
来れないかなぁ?」
それくらいメールで済ませろ…!
ツッコミたい衝動に駆られるものの
早苗のドレス姿を想像してニヤけた。
絶対可愛い。が、何故かちょっと悔しい。
「主役の部長って誰?」
「あはは、やっぱ気になる〜?
立石先輩だよ」
得意のニヤニヤ顔をして、
円香が俺の腕にくっつく。
普段ならとっくに引きはがすけど、
今はそれどころじゃない。
立石が…あの立石 和馬が、
演劇部部長?!
しかもヒロインが早苗?!
ははは…
物語が恋愛系じゃなくてよかった。
確か兄弟が魔女をやっつけるんだよな?
でもコレを現代風にアレンジって
どこをどうするんだろう…。
「亮佑今、ホッとした?
ふふふ〜残念でした!!
この話し、禁断の兄妹の恋愛物語だよー!」
「うぇ?!嘘!」
「嘘かどうか確認する為にも
学祭来てよー!あたし、
宝石泥棒その1役だから」
葉っぱをかけられてる気もするが、
円香の役名も地味に気になる。
ていうか、何故宝石泥棒が出て来るんだ?
「行けたらね…」
その後、立石ファンクラブについて
熱く語られ、まだ脳内パニックのまま、
円香と別れて家に帰った。

