夏 色 の 風





「あれ……ヒロコ、アリサ、

嵯峨山くん、峰岸くんが何故家に」




縁側から、早苗とばあちゃんが帰宅した。

この2人は荷物が多い時は

玄関を通らず、縁側から居間に

直通することがよくあった。




思えば不思議な図だ。

早苗の彼氏と勘違いされている亮佑が、

噂好きの早苗の中学の同級生4人と

居間のテーブルを挟んで座り、

亮佑の彼女と勘違いされている早苗は

ばあちゃんと大量の買い物袋を持って

縁側に立っている。




(あぁ、この4人が余計なことを

言い出しませんように…)


「ナエちゃーん!

遊びに来たら、彼氏さんが出て来たから

馴れ初めを聞くためにお邪魔してたの♪

ナツばぁちゃん、こんにちは」


祈りとは、時に虚しい。




ばあちゃんが驚いた顔で

亮佑と早苗を交互に見た。

これは絶対勘違いされているパターンだ。




「そうだったのかい?!」


「「違いますっっ」」




ツッコミのタイミングが被った。

それすら、ヒロコとアリサは

面白そうに笑って見ている。




(最悪のパターンだ…)




頭を抱えようとして、

早苗が頭を抱えているのが見えた。


「ナツばぁちゃんにも秘密の恋…かぁ。

うふふ、素敵だわ〜」


アリサが情熱的に話す。

事実誤認であるが、ばあちゃんも

ヒロコとアリサに負けないくらい

キラキラした顔で早苗を見ている。




早苗はというと、片手で額に手を当てて

下を向きっぱなしである。が、

亮佑は何か身の危険を感じた。




(コレはヤバい…)




大爆発、5秒前。