夏 色 の 風





で、問題のトマト。




あー…

見える。見えますよ葉っぱの間から。




真っ赤に熟したトマトが…

ト、トマトが…




「ばぁ!」


「にゅわっ?!」




トマトにマジびびりしてりとき、

後ろから誰かに肩を叩かれた。

声で分かってしまう。早苗だ。




「早苗!びっくりさせんな!」


「あはは、なんかきょどってたから

今しかないかな、と」




白のセーラー服に、

青いリボンが涼やかな格好。

そして極上の悪いカオ。

敵に回すと怖い、と昨日の半日足らずで

即刻理解してしまった。




「何してんの?」


「ばあちゃんの手伝い」


「トマト収穫すんの?

ぁ、コレとか美味しそう」




なんの抵抗もなくトマトに触れる早苗。

ひぃ、と声が出たのは言うまでもない。

早苗がそれを見て、聞いて、

俺がトマトダメなのに感づいたらしい。




あぁ、弱点を知られた…と

落ち込む俺だったが、

予想に反して早苗は、

自分が触れていたトマトを取って

制服で軽く拭いて、俺に突き付けた。