夏 色 の 風





ふぅ、と息をついて

立石は立ち上がった。

もう話しは終わった、ということだろう。




「最後に、1つだけ言っとく」




扉のほうに歩き出した立石は、

立ち止まって振り返りながら言った。




「親父と復縁して、妹にも懐かれて

本当は早苗をあのまま家に

置いておきたかったんだけど。

早苗の口から出る言葉は、

大体お前の名前かナツさんの名前。

しかもお前バス停で倒れたって言うし

早苗血相を変えて家を飛び出したんだ。

荷物は今、俺が届けに来た」




ちょっと…早苗の話しと違うんだが。

荷物纏めて出て来たんじゃねーの?




「壱逗 亮佑。一応言っとくが、

俺の妹は天下一品の美少女だ。

手出したら殺すからな!!

と・く・に!!妹を泣かせたら

俺が絶対許さねーから。

後は早苗次第だ。じゃあな。

早く治せよ」




さっきの優等生キャラから

一気にシスコンキャラへ。

立石…カッコつけたい気持ちは分かるが

シスコン全開な顔で言われても

全く説得力ないんですけど。




立石は扉を閉める前に、

もう一度だけ振り返った。




「もう、早苗を手放すなよ。

あいつを1人にさせた場合も、

俺はお前を殺しに行く。じゃあな」




じゃあ俺家に帰れねーじゃん!!




なんて突っ込む間もなく扉は閉められた。








はぁ…遠回しに応援してくれてるのか、

はたまた本気で俺を殺すつもりなのか…









早苗と上手くいっても殺されそうだし、

上手くいかなかった場合も殺されそう。




どっちに転んでも

俺の命がないんですけど?!




シスコンお兄ちゃんには、

今後も頭を悩ませそうだ。