夏 色 の 風





「なら、話しは早いね」




立石はそう言って、正座した足を崩し

まっすぐに伸ばして座った。


「最低だよなー、俺の親父」


「うん。全くそう思う」


苦笑いをしながら、立石は続ける。


「早苗と兄と妹っていう

関係だと知ったのは今年になってからだ。

俺の母親と親父が2人で話してるのを

聞いちゃったんだよ。

『早苗ちゃんも和馬と同じ学校に?』って。

早苗って誰だ?と思って、

入学する生徒の名簿見たら、

"岩淵 早苗"って子がいるから

親父とどういう関係なのか気になって。

俺の親父は単身赴任なんだけど

休みがあるとすぐ帰って来るんだ。

問い詰めたらあっさり白状した」




立石って………和馬って名前だったのか。

知らなかった事実。

円香から聞いた情報だと

立石は生徒会役員だから、

入学する生徒の名簿を読むのも

造作ないことだっただろう。




こいつの顔がいいのは

父親がいい顔してるのかな。

早苗も美人だし。

妻がいながら他に2人の女に手を出せるんだ、

イケメンじゃなかったらフツメンの

立場が全くない。




「早苗を返して欲しいってのは、

そういう意味だったんだな」


「まぁね。

両親からも早苗からも怒られたけど。

結果、早苗と親父が仲直り…ってか

早苗が一発殴って、解決出来たから

よかったと思うんだけどね。

俺も、早苗に付き纏わないって

宣誓書まで書かされたからな」




立石はそう言って笑った。

宣誓書まで書かせるとは…。

すげーなぁ、早苗さん…

敵にしたくはないな!