「和彦さんは、菜々実さんと
あたしの母親以外に、もう一人
別な女性と関係があったの。
それが今の奥さんで、立石先輩のお母さん。
つまり立石先輩は、あたしの
異母兄妹ってことよ」
あの立石の父親が…そんな人だなんて。
意外すぎる。
「立石先輩があたしの存在を知ったのは
つい最近だったみたいよ。
あたしは菜々実さんに預けられた時から
知ってはいたんだけどね。
同じ高校だなんて、世間て狭いわよねぇ。
学校でしつこくて話しかけられて
こっちはいい迷惑だったわ。
だから、はっきり直接文句を言える
いい機会だと思って立石家に
乗り込んだのよ。
そしたら和彦さんもちょうど単身赴任から
戻って来てたから、ひっぱたいてきたわ。
和彦さん、当時の自分の
勝手な振る舞いを反省して
ご機嫌取りで洋服も靴も買ってくれたの。
スッキリしたから帰ろうと思ったら
先輩の妹たちに懐かれちゃって、
家族総出で引き留めるのよ。
ズルズル居座ってたけど、
どうやって帰ろうか悩んでた時に
亮佑が倒れたって言われてから
急いで荷物纏めて帰ってきたの」
フン、と鼻息荒く、早苗は
拳に力を込めながら話す。
俺は脱力感に襲われていた。
なんだ……
なんだ……
立石と早苗は兄妹だったのかぁ……
だから馴れ馴れしかったんだ。
叔母さんと拗れた相手の子供だから
ばあちゃんも早苗もあいつに
冷たかったのか。
「ちょっと、亮佑?!
やだ、顔色悪いわ…
ばあちゃーん!円香ー!
水枕まだなの?!」
なーんだ…
なーんだ…
よかったー…………
心の中に渦巻いていた
真っ黒でドロドロしたモノが
今は弾けて、爽やかな風になって
俺の心を吹き抜けていた――――

