少し落ち着いたころ、
早苗は自分で俺から離れて、
照れ臭そうに笑った。
ティッシュで鼻をかみ、
「ジロジロ見ないでよ」なんて
いつものように言う。
「亮佑が声出なくてよかったわ。
出てたらからかわれそうだもん。
タイミングばっちりだったわね」
『早苗』
ん?と小首を傾げる早苗に、
俺は自分の限界を超えるスピードで
文字を打って早苗に見せた。
『もう、誰もお前から離れないよ。
ばあちゃんも、円香も、樽澤さんも、
勿論俺だってそうだよ。
菜々実叔母さん、きっと今
天国で早苗を見て笑ってるぜ?
「寂しい思いをさせてごめん。
だけど、ほら。私の言った通りでしょ?
私のお母さんは不思議な魅力で
あなたを包みこんだでしょう?」って。
まんまと嵌まったな!!
叔母さんの作戦勝ちだな!!
だから、無理すんな。
みんなお前のことが好きで構ってるんだ。
無理させたくないんだよ。
だからって、1日中ボーっとしてたら
俺が後ろからひっぱたくけどな。
早苗は"早苗のまま"でいいんだ。
無理して背伸びしたり、
無茶してジャンプなんかしても
誰も喜ばないからな』
早苗はまた涙を目に溜めた。
俺は馬鹿だから、ちゃんと
文章になった言葉を打てないけど
急いで打ったにしては上出来だと思う。
「ありがとう。亮佑。
あたし、ばあちゃんにバイトのこと
話してみようかな。
黙ってても、きっとバレてるけど。
正直に言って、許可貰うわ。
隠れて背伸びしないで、
ちゃんと言ってみるね!!」
そうしろ、の意味を込めて
大きく頷いた。
だが、しかし………
今の話しだと、早苗の壮絶な過去は
分かったけど、立石との関係が
イマイチ、ピンと来ない。
思ったままを打ち込むと、
早苗は笑いながら答えてくれた。

