早苗は自嘲気味に笑う。
ていうか母さん…!
早苗の実のお母さんに
どんな啖呵を切るんだよ……
そういえば、お葬式の後
やけに興奮した母さんを見た気がする。
酒を少し飲んでたし、それか?
なんて思っていたのだけど。
もしかして、こっちか?
『早苗、大丈夫か?』
いつまでも笑っている早苗は、
その文字を見るなり泣き出した。
「大丈夫な訳ないじゃない!!
菜々実さんが突然死んじゃって
何故かあたし冷静だったの…。
『次は誰に預けられるの?』って
そんなこと考えてたの…。
あんなに、あんなに迷惑かけて
仕事いくつも掛け持ちしながら
不自由ない暮らしをさせてもらって!!
辛いことも、悲しいことも
いっぱいあったけど、それ以上に
幸せなこともたくさんあったのに!
自分の中で菜々実さんを"過去の人"って
受け流しちゃって、"次"を
考えちゃったのよ、あたし!!
ばあちゃんとの生活は大好き。
迷惑かけたくなくて、なんでも
自立しなきゃって思うけど
ばあちゃんは笑って無理するなって
言ってくれるの…早苗は早苗のままでいい。
今のままで十分なんだよって。
だけど、嫌なの…
あたし、ココにいたいもん。
もっとずっとココにいて、
ばあちゃんとも円香とも、樽澤さんとも
一緒にいたいもん!!!!!!
あたしが何もしないでいたら
他の人たちみたいに、あたしの前から
みんないなくなっちゃうんじゃないかって
不安で不安で仕方ないの!!
だから、だから……」
咄嗟に、早苗を抱きしめた。
温かい体温が伝わる。
早苗は驚いて、喋るのをやめ
代わりに大声で泣き続けた。

