「さて。病人の君を相手に

世間話をするつもりはないよ。

早速、本題に入らせてもらっても?」


静かに頷く。それを確認し、

立石はゆっくり話し始めた。


「今回、早苗を強引に家に

連れて帰ったのは理由があってね。

……早苗の身の上話は聞いてある?」


「あぁ」




それは昨夜に遡る―――――
















早苗と、携帯を使って

会話が出来るようになり

やっと、『おかえり』を

伝えることが出来た。




その、少し後。

たわいない話しを一通りしてから、

早苗が言った。




「聞いて欲しい、話しがあるの。

ばあちゃんと菜々子さんが

ずっと秘密にしてくれていたこと。

本当は話さないつもりだったけど

こうなってしまったから……。

伝えるタイミングを迷ったけど

今しかないと思って」




不安げに言う早苗に、

俺は急いで文字を打つ。


『無理しなくていいよ』


「無理なんてしてない。

むしろ、亮佑には話しておきたいから」


苦笑いを浮かべつつ、

早苗は大きく深呼吸して語り出した。




「まず、あたしの話しをする前に

少し立石さんについて話さないと。

…菜々実さんの元旦那は、立石って言うの。

立石 和彦(カズヒコ)さん。

菜々実さんとの結婚生活は、

順風満帆だったわ。…ただ一つ、

中々子供が出来ないことを除いて。

立石さんは段々気持ちが離れていって

ついに浮気しちゃったの。

菜々実さんは知ってて目をつぶった。

だけど…浮気相手に子供が出来て、

立石さんて変な所が真面目だから

菜々実さんに自分で言ったのよね。

それで菜々実さんは、ばあちゃんを頼って

ココに逃げて来たの」




なるほど、ばあちゃんの話しと

辻妻が合う。