翌朝。
俺は自分の回復力に驚いていた。
昨日は身体を起こすのも
やっとだったのに、普通に立って歩ける。
朝、普通に居間に顔を出すと
ばあちゃんと早苗も驚いた顔をしていた。
「おは…よ」
声はまだ戻らないけど、
携帯で文字打ちをすれば会話が出来る。
ばあちゃんからの指示でマスクを
必ず着けなきゃいけないのが苦痛だけど
2人に移すわけにはいかないので
仕方ない。
円香と樽澤さんは、昨夜のうちに
帰ったようだった。
俺は早苗と少し会話(俺は文字打ち)した後
疲れて朝までぐっすり寝たので
2人が帰ったことに全く気付かなかった。
「亮ちゃん、今朝はお粥でいい?」
お粥はあまり得意じゃないが、
だからって白米を食べれるほど
俺の消化器官は回復していない。
頷くと、ばあちゃんは早速作りに
台所に向かった。
早苗はいつものように、
制服を着てテレビを見ていた。
俺が定位置に座っても、
やっぱり気まずいのか顔も合わせない。
「さ…」
呼ぼうとすると、さっと立ち上がって
台所に逃げて行ってしまった。
どうしたもんか…
こういう時男が弱いことは
この何日かで充分過ぎるほど理解した。
樽澤さんの気持ちがすごくよく分かる。
しばらくして、熱々のお粥を
ばあちゃんが運んできてくれた。
梅干し入りのお粥だ。
それから早苗が、麦茶と蓮華を
運んで俺の横にドンと置いた。
先に朝食が済んでいた早苗は、
ばあちゃんの小言を無視して
さっさと家を出て行く。
今日は風は強くないが、雨が降っていた。
「ごめんねぇ、亮ちゃん。
なんだか今朝はあんな感じなの。
せっかく帰って来たのに…」
ばあちゃんも寂しそうに
テーブルに肘を立てて息をついた。
俺はテーブルの下で文字を打ち、
ばあちゃんに携帯を見せる。

