夏 色 の 風





でも不思議と、握られた手は

とても温かくて気持ちよかった。




幽霊さんって意外と温かいんだな。

冷たいのかと思っていたけど。




そんなことを思っていると、

手に、温かい雫が垂れた。




よっ、よだれ?!

もしかして幽霊さんでも

死に神さんでもなく…

妖怪さん?!

俺食べられちゃう系なの?!




冷や汗が出る。

尋常じゃなく背中が冷たい。

あぁ、さよなら俺の人生。

人生最期に楽しい思い出と

人を好きになることが出来てよかった。




でも俺の好奇心が疼き、

ほんの少しだけ目を開けてみる。

食べられる前に一目その姿を

目に焼き付けておきたい。

そして推理モノでよく見る、

"ダイイングメッセージ"を残したい。




暗闇で最初は全く見えなかったが

次第に慣れてソレは人型だと知る。

妖怪さんってもっとグロテスクな

姿をしてると思ったよ…

人(?)を見かけで判断しちゃダメだな。




「亮佑…」


呟かれた声に、聞き覚えがある。

俺、この妖怪さんと面識があるのか?

いやいや、そんなはずは…




目を凝らして見てみると、

ソレは幽霊さんでもなく

死に神さんでも妖怪さんでもなく…







――早苗だった。