夏 色 の 風





円香ははっきり顔を見たわけではない。

はっきり見られたわけでもない。

が、あの特徴的な金髪とテンション。

間違うはずはない。




だが、あっちが円香に気付いている

様子はまったくない。




(早く帰れ、早く帰れ…)




念のようなものを送り続けると、

一緒に座っていた女性が、

怪しげな雰囲気を醸す円香に気付いた。




金髪1に何か相談している。

円香はとっさに、店員を呼んで

メニューの中からタラコパスタを選び

アイスティーを頼んで凌ぐ。




店員が去ったあと、

金髪1が円香をじっと見ていることに

気が付いた。冷や汗が出る。




「あああぁぁぁあ!!!!!!

亮佑の連れその1ぃぃ」




(ひぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!)




何故バレた、何故バレたんだ…

円香は知らんぷりしてみたが、

金髪1は円香の席まで来て、

反対側に座った。

もう逃げられない。




「確か君、亮佑の連れその1だよね」


(連れその1って…)


円香も金髪1と呼んでいるので

文句を言う立場にはないのだが。


「ぁあ、はい…」


「やっぱりー!!亮佑元気?

この間たまたま会ってさー、

結婚したんだって?

やっぱり相手は早苗ちゃん?

あの子本っ当に可愛いよねー、

あ!!葉那はもっと可愛いからね!」


(うっ、煩い…)




分かってはいたものの、

目の当たりにすると改めて思う。




葉那と呼ばれた女性は

少しいらついた顔をして、

フンっと顔を背けてジュースに口をつけた。