家の電話が鳴った。
テレビの音を小さくしてから
電話に出た。
「はい、壱逗です」
「あっ、円香?あたしだけど」
「ナエちゃん!おはよう、
うちのチビがお世話になってます」
「ううん、すっごくいい子にしてるわよ。
何時頃迎えに来るの?
うちの主人が今日オフだから
どこか連れて行きたいって
煩いんだけど」
「いいの?!
お昼ごろ迎えに行こうと
思ってたんだけど…」
すると早苗は、子供と遊んでいるだろう
旦那様に「お昼頃迎え来るって」と伝えた。
聞き取れないが、旦那様の声がして
早苗が「そうね」なんて相槌を打つ。
「じゃあ円香も一緒にって。
子供は旦那に任せて、久しぶりに
ガールズトークしましょ」
「うん!!じゃあ1時ごろに」
「分かったわ。何処に行くか
考えておくわね。それじゃ」
電話を切った。
早苗は、円香たちから遅れること2年、
旦那様が医大を卒業して、
大手大学病院に就職したことから結婚した。
子供はいないけど、幸せそうだ。
早苗の旦那様は、
高校の先輩だった立石先輩。
高校のときから、もしかして?
なんて思っていたのだが、
そうなると少し嬉しい。
亮佑は、高校のころ
早苗にベタ惚れだったから
かなり悔しがっていたのだけど。
円香は情報番組から
今日行くスーパーを決め、
掃除と洗濯物干しを終わらせてから
家を出た。
エレベーターのところで
隣室の山神さんに会う。
「今日はお子さんいないの?」
「えぇ。今日は友達のところに
お泊りしてるもんですから」
「まぁ。それじゃ、今度
家に遊びに連れてらっしゃい。
うちの孫がしばらくこっちに
遊びに来るの!」
そういえば、幼稚園以外で
同世代の子供と遊ばせたことがない。
「ぜひ!お願いします」
エレベーターが1階に下りたので
そこで別れた。

