「あなた、朝よ!

起きてよ、会社に遅刻しちゃう」




旦那様はベッドの中で

何か呻きながら身をよじらせた。




まったく、とため息交じりに呟くと

"奥様"は旦那様の上にのしかかり

身体を揺さぶる。

そして耳元で囁いた。




「ねぇ…起きて?

朝ごはんにする?それとも…

あたしを朝ごはんにしちゃう?」




ガバッと旦那様は飛び起き、

"奥様"はベッドの下に落とされた。




「痛ぁい」


「お前、朝から破廉恥!

おかげで目がパッチリ!」


「ならいいじゃない〜

朝から奥様をベッドから突き落とすなんて

ひどいわよー!」


「勝手に乗ったんだろ!

…ひぃ!もうこんな時間?!

なんでもっと早く起こさないんだよ!」


「ちゃんと起こしたわよ〜

起きなかったあなたのほうが悪い!

ほら、朝ごはん出来てるから

早く済ませちゃって」


言いながら、旦那様は

テキパキ寝間着を脱ぎ

素早くワイシャツとスラックスを

身につけてリビングに急ぐ。




"奥様"は寝間着を丁寧に畳み、

ベッドを綺麗にしてから

風呂場に移動し、洗濯機を回した。




「おい!なんで朝からトマト?!」


「トマトは身体にいいんだってー!

それにナエちゃんから、亮佑には

しっかりトマトを食べさせるように

言われてるんだもん」




"奥様"――改め、円香はリビングで

トマトを睨みつける

旦那様――改め、亮佑を見て笑った。