いつもならすぐ着くバス停に

20分もかかってしまった。




こちらに近付いているのか、

雷鳴はさっきより大きく、

光と音の間隔が狭くなってきている。




バス停の時刻表には、

手書きの文字で『台風接近の為、運休』と

紙がビニールに覆われた質素なお知らせが

ガムテープでがっちり貼られていた。

ビニールもこの雨を耐え切れなかったのか

赤いマーカーで書かれた文字が

滲み始めていた。

あと少し遅ければ、何が書いてあるか

分からなくなっていただろう。




「クソッ…むだ足か……」




バス停の後ろにある、待合室の椅子に

どっかりと座る。一気に疲れが来て

身体が重たく、動きたくない。

全身に重りが乗っかっていて、

椅子にのめり込んでしまいそうだ。




――ゴロゴロゴロゴロ……




……雷が一段落するまで、

もうちょっとここにいよう。

今出たら感電死しちゃうかも。

または、発火して焼死……。




はははは、まさかそんな

漫画見たいな展開はないだろ。

きっと、多分…そう信じてる。




古い待合室は、風が吹くたび

大きくミシミシ音を立てて

隙間風に身体を震わせた。

トタン屋根の待合室は、

真ん中の辺りに水溜まり。

そりゃ、こんな簡素な待合室じゃ

雨漏りするよなぁ…。