夏 色 の 風





気付いたら、走り出していた。




ばあちゃんに置き手紙だけを残し、

傘を差して外に飛び出す。




雨と風が強く、傘はすぐに

使い物にならなくなった。




立石の家の場所は、

円香からなんとなく聞いてあった。

さすがミーハー…。

聞いてもいないのに、次から次へと

立石情報が飛び出して来た。

血液型とか、好きな食べ物とか…

中には、どうやって調べたんだ?!

っていう情報も盛り沢山で。

女子を舐めちゃいけない。

恐るべし、情報網。




その情報網によると、

立石の家はバスで20分ほど

街の方に出るらしい。

曖昧さ満天だけど、今はこれしか

頼れるものがない。




バス停まで、いつもなら

走ればすぐ着くはずなのに、

風に煽られ、雨で滝打ち修業もどきをされ

着ていたシャツとジーパンは

ただの重りになってしまった。

急いで来たために、足元はサンダル。

すでに水の力で脱げそうだ。




ぁ…ぱ、パンツまでずぶ濡れなのは

あまり大きな声で言わないように…




途中、雷まで鳴り出して

俺はこのまま死ぬんじゃないかと

錯覚してしまう。




普段通る道が、水溜まりで

湖のようになっていたため、

仕方なく迂回して河原の方に抜けた。




いつもキラキラしてて、

透き通っている綺麗な川の流れは

見る影もなく、茶色の水が

物凄い勢いで流れていた。




「すっげ…」




口を開けただけで雨が入って来る。

一度立ち止まると川に

落ちてしまいそうになる。

土手沿いには土のうが積まれ、

雨合羽を着て懐中電灯を持った

パトロールのおっさん達が

付近の監視をしている。




あれに見付かったらまずい……




重たい身体を必死に動かして

見つかる前に退散した。