早苗が帰って来ないまま、

また朝を迎えた。




「亮ちゃん、起きてるかい?」


まだ布団の上で寝ぼけていると、

ばあちゃんが部屋に入って来る。

ノックなし。…早苗はばあちゃんに似たな。


「おはよ…ふぁ。…何?」


「朝ごはんの支度しておいたから。

ばあちゃん、町内会の用事で

今から出て来なくちゃならないの」


「え゙…今から?」


昨日の夜遅く、ついに雨が降り出した。

雨は段々強くなってきて

雨音がすごくて昨夜は眠れなかった。

風も突風レベルで、庭の木が

大きく横に揺れている。


「んだー。土砂崩れの恐れがあるから

山沿いの人たちが避難することになって

今から避難所の片付けとご飯の支度を

してこなきゃならねぇんだって」


困った、困ったと肩を叩きながら

ばあちゃんは「家の中頼むねぇ」と

部屋を出て行った。




土砂崩れ………

都会生まれ、都会育ちには

あまりピンとこない。

ニュースで見たことはあるけど

実際そんなことがあるなんて

想像出来なかった。




「気をつけてね」


「いってきます」


雨合羽に、水を弾くズボンを長靴イン。

傘は差してみたものの、

風が強すぎるので諦めたらしい。




ばあちゃんが家を出た後、

朝食を済ませて片付けをし、

掃除機をかけた。

洗濯物は2人分なので、

全然溜まってないから回さない。

テキパキ掃除を終わらせると、

まだ9時にもなっていなかった。