円香も、直之も

まったく人が良すぎる。




俺に告白してきたくせに、

背中を押してくれた円香。




片想いの相手を振った俺に、

説教臭く前を向かせてくれた直之。




『好き』という気持ちがあるくせに、

円香や直之のように、その気持ちを

素直に言葉や態度で表すことが

出来ない俺。




――そうだよな。

立ち止まってても仕方ない。

立ち止まってても何も始まらない。




だぁーっ!!!!!!!




考え込むことが苦手なくせに

ついつい頭をいっぱいにさせてしまう

周りの雰囲気に流されやすい

俺って馬鹿だ!大馬鹿だ!

頭悪いくせに!

いくら捻ったって、いい考えが

浮かぶ訳ねぇじゃん!

直之じゃないんだから!

円香みたいに、ウザがられても

毎日張り付いてることしか

出来ないじゃん!

体力くらいしか取り柄ないんだから!




2人のおかげで頭がスッキリした。




そうだ。これが俺のスタイル。

頭を空っぽにして、頭で考えるんじゃなく

思い立ったら即行動!




早苗が帰って来ない今、

俺に出来ることはただ1つ。




携帯を握りしめ、

頭がガシガシ掻いて立ち上がった。




今、俺に出来ること。

俺にしか出来ないこと。




気合いを入れるため右頬をひっぱく。

よっし!!




とりあえず……




「風呂入ろう」