夏 色 の 風





「さぁさ、昨日のことは忘れて

ご飯を食べましょう」




そう簡単に忘れられません…




だがまた無言の圧力をかけようとしたので

その前に急いで昨日と同じ場所に座る。

ふんわりとしたみそ汁の匂いで

お腹がぐるぎゅる〜と鳴る。




早苗に爆笑されながら、

「「「いただきます」」」

みそ汁を飲んでから、卵焼き。




俺の家では甘い卵焼きだけど、

コレはだしが効いている。

親子って味が似る、とか聞くけど

ここは例外なのか…?と首を捻った。




「ふふふ、卵焼き美味しい?」


「ん、美味い!

…けど、母さんの卵焼きは甘いのに

ばあちゃんのは甘くねぇーのな」


「あら、これは早苗が作ったの。

今日のお弁当の残り物よ」




なるほど…早苗も料理するのか…。

ちらっと見ると、

『美味しい』と言われたことが

嬉しかったらしく、少しだけ

口の端が緩んでいる。




「早苗って今日学校なの?」


「部活よ、部活」


「へぇ…何部?」


「亮佑に話す義理はないでしょ」


ツンツンである。