「ナエちゃん、いつ帰って来るのかなー」
どんよりした空を見上げながら
円香は俺の腕に自分の腕を絡める。
「どさくさに紛れて何やってんだよ…」
「ばれちゃったー?えへへ」
「えへへ、じゃねーっ!」
でも離さない。
最近、円香はしたたかだと思う。
強い風が吹いた。
髪が遊ばれる。
「円香は…さ」
ん?と円香が俺を見る。
「いや…座ろっか」
2人で、早苗と一緒に寝た階段に座った。
今日は川の色が薄く濁っている。
座ってもなお、円香の腕は離れない。
「あたしね、…中学の時イジメしてたの」
円香が静かに語り出す。
…って、うん?
イジメ"してた"?
「加害者?!」
「あっはは、まぁそうなるかなぁ」
「笑えねぇぞ、馬鹿っ」
頭にチョップする。
円香はぎこちなく笑った。
「あたしとナエちゃんは、
中学から一緒なんだぁ…。
ナエちゃんは小学生の時、
ナツばぁの家に来たんだけど
中学までは自宅学習してたの」
だから早苗は、努力家なんだろう。
部屋にたくさんあった参考書を思い出して
納得してしまう。
「でね、あたしのばあちゃんと、
ナツばぁは仲良しだからさ。
ナエちゃんのこと、知ってたんだ。
1回ハルばぁに連れて来られて
ナエちゃんと会ったときにね、
気弱ですぐ泣くし、面倒な子って思った」
早苗が『気弱ですぐ泣く面倒な子』?!
全然イメージが湧かないんだけど…
つまり、早苗は中学までは
あんなツンツンな性格じゃ
なかったってことなのか?

