「菜々実の遺品を整理して、

早苗と血の繋がりがないと分かった。

早苗が誰の子供なのか、詳しく知ったのも

随分後のことだった……。

早苗はというとね、最初は無口で

何をしても喜ばないし、怒らないし

とにかく感情を表に出さない子だった。

でもね、中学校に通わせ始めたら

早苗もだんだん変わった。

それはきっと、円香ちゃん。

あんたのお陰だね」




目に涙をいっぱい溜めて、

ばあちゃんはニッコリ笑った。

涙を流しながら、円香は首を横に振り、


「違います…!ナエちゃんは、

ナエちゃんはあたしを救ってくれた…!!

違うんです、逆なんです…ぅうっ」


円香はその場に崩れて、わんわん泣いた。

俺はどうしていいか分からず、

円香にティッシュを差し出してから

背中を摩った。




「ありがとう、円香ちゃん。

あんたがいてくれたから、

早苗はあんなに明るくなったんだぁ…

忘れたい過去を乗り越えて、

たくましくなった…」


「ばあちゃん…その話と

立石って奴、どう関係してんの?」


円香もピタリと泣くのを止めて、

しゃっくりを上げながら頷く。




ばあちゃんは暗い顔をして、

どうしようか迷っていた。

だけど、俺たちの視線の強さに

根負けしたのか、話してくれた。




「ばあちゃんが言えるのはこれで全部…。

菜々実の元旦那の名字は……









――立石なんだぁ」