夏 色 の 風





居間に行くと、ばあちゃんが正座をして

いつもの席に座っていた。




俺と円香は並んで、

ばあちゃんと対面するように座る。




俺たちが座ったのを確認するように

一瞥すると、ため息交じりで

ばあちゃんが口火を切った。




「これは、秘密にしていたことだけれど、

今の状況で黙ってはいられないの。

あまり詳しくは話せないけれど、

他言無用でお願いね、2人とも」


同時に頷く。

それに安心したのだろう、

ばあちゃんは空を見つめて話し始めた。








「あれは、亮ちゃんの叔母の菜々実が

結婚して2年が過ぎた頃だったかねぇ…

菜々実が突然訪ねて来て、家に帰らないと

言い張ったんだよ。

ばあちゃんは何があったかさっぱりで。

その頃は亮ちゃんも生まれていたし、

菜々実は姉の菜々子に頼ることが出来ず

家に逃げ込んで来た感じだった」




ばあちゃんは視線を下にして、

少しだけ嬉しそうな顔をした。

楽しかった記憶を思い出してる感じだ。




「菜々実は3ヶ月家にいたの。

昔から、菜々子は世話が焼ける子で

すぐばあちゃんを頼ってたけど

菜々実はしっかりしていたし、

高校を卒業するとすぐ家を出たから

菜々実がばあちゃんを頼って来たことが

嬉しくてねぇ…。毎日笑ってた」




ふぅ、と息をつく。

円香は俺の母親も叔母さんも

知らないけど、話しを聞いて

朗らかな気持ちになったんだろう、

柔らかい顔をしてばあちゃんを見ていた。