あれは直之がばあちゃんの家を去る、
前の日の夜だった。
スイカを食べ終わって、
居間でぐーたらしていたときに
早苗は言っていた。
『今、挑戦していることがある』と。
確か、美術のコンクールに
作品を出展すると言っていた。
「もしかして、この絵を
コンクールに出展するつもりなのか?」
「あ!そうかもね!
こんなに上手なんだもん、きっと
上位入賞間違いなしね!」
うん、早苗なら間違いない。
絶対結果を残すだろう。
「で…?」
「で…って言われても」
この絵をコンクールに出すのかも、
っていうのは分かったけど
結局何を伝えたいのか分からない。
うーん…頭を捻っても、
何も考えが浮かばない……。
そこへ、
「2人とも」
頭を悩ませる俺と円香に、
ばあちゃんが声をかけた。
勝手に人の部屋に入ったことを
咎められると思ったのか、
円香が小声で「ごめんなさい」を連呼する。
だけどばあちゃんは表情を変えないまま
部屋の入口で手招きをした。
「話しがあるの、居間にいらっしゃい」
ただならぬ様子に、
俺と円香は顔を見合わせて
絵に布を掛け、電気を消してから
居間に向かった。

