夏 色 の 風





扉を開けると、まだ昼間なのに

部屋は薄暗かった。

そして、なんだか変な匂いがする。




俺は入口にあるスイッチで

電気を着けた。

2日前と同じ、綺麗な部屋だ。




「あれだ…」


円香がゆっくりイーゼルに近付き

上に掛けられていた布を一気に外す。


「これは…畑?」


2日前に見たものと同じ絵が、

そこにはあった。

違うことと言えば、まだ白かった部分に

色がついていたことだ。




真っ赤なトマトが並び、

その後ろに胡瓜、インゲン、枝豆。

隣にはトウモロコシと茄子、

南瓜にスイカが広がっている。


「すご…」


呟くように言った円香に、

激しく同意してしまう。


前見たときは、部屋は暗くて

廊下の光を頼りに見ていたし、

色もまだ全部塗り終わってはいなかった。




だけど今回は違う…。

まるで写真を切り取ったかのようだ。




「ナエちゃんはこの絵で、

あたし達に何を伝えたかったの…?」


問題はそこだ。

絵はとても素晴らしいが、

俺達に何を伝えたいのかは分からない。


「…これは……」


絵から離れ、部屋を物色していた円香が

何かに気付いたのか、俺を手招きする。

近付くと、それは一枚の紙で

ベッドの脇の壁に貼ってあった。




『第○回、高校生絵画コンクール』




俺は、早苗が前に

言っていたことを思い出した。