「亮ちゃん聞いてたのかい?
……はぁ、男の人ってなんでこう
いざっていう時に結託するのかねぇ」
ため息をつきながら、ばあちゃんは
やれやれと立ち上がる。
「でも、本数は減らしますからね。
日本酒は1合まで、ビールは2本までです」
いつも豪快に一升瓶を開ける
樽澤さんからするとかなり少ない。
樽澤さんは禁酒命令が解除されたことに
喜んでその場で踊りだした。
俺もばあちゃんも笑ってそれを見た。
思いがけないことがあったけど、
それもそれで余興と思えば楽しめた。
そのあと、10時過ぎになって
樽澤さんは帰っていった。
俺とばあちゃんで残った片付けをして
ばあちゃんに先に風呂を譲ってもらい
風呂に入った。
風呂から上がって居間に戻ると、
ばあちゃんは誰かと電話中だった。
もう11時近くなのに、
こんな時間に誰と電話してんだろ?
横目で見て、冷蔵庫から麦茶を出し
コップに氷を入れてから注ぐ。
「…そうですか。……ぇえ、
分かりました。それじゃ…どうも」
電話を切ってから、ばあちゃんは
小さくため息をついた。
不本意な内容だったのか、
眉間にシワが寄っている。
「ばあちゃん、風呂、次どうぞ。
こんな時間に電話って誰から?」
「…何でもないよ。
ばあちゃんお風呂入って寝るから
ここの電気と戸締まりよろしくね」
作り笑いをして居間を出ていくばあちゃん。
何があったんだろう?
麦茶の入ったコップが、
カランと音をたてた。

