夏 色 の 風





お好み焼きも平らげると、

お腹いっぱいで動けなくなっていた。




1人例外として…

樽澤さんは酔っ払っていて、

さらにテンションが高くなっているのか

ばあちゃんに言い寄っていた。


ばあちゃんは軽くあしらっているが、

樽澤さんはかなりしつこい。


そのうち、諦めたのか

テレビの前で踊り始めた。

やっと解放されたばあちゃんが

片付けに行ったので俺も手伝う。




「寝たら随分顔色が良くなったねぇ。

よかった。お腹いっぱい食べれたかい?」


「うん!全部旨かった」


「餃子は早苗と円香ちゃんも

手伝ってくれたからねぇ。

お好み焼きは前日から準備してたんだよ」


「ははっ、さすがばあちゃん。

そういや、円香呼んだの?」


ばあちゃんは首を25度くらい傾げて

右手を右頬に当てた。

よく言う、『困ったポーズ』だ。


「急に早苗が呼んだのよ。

私も花火の時、亮ちゃんたちが

お世話になったお礼をしてなかったから

喜んで招待したの」


そう言って片付けに集中し始めた。




別に早苗が円香を呼ぶことが

悪いと言っている訳ではないが

このタイミングで、円香を呼ばれると

少し不安になってしまう。




立石が言っていたことは

本当なのか?と。




居間に戻ると、カラオケ大会が

始まっていた。

勿論、首謀者は酔っ払いと円香だ。




…ん?うっすら円香の頬がピンク色だ。

そしてヘラヘラ笑いながら手を叩く早苗も。




ばあちゃんと顔を見合わせる。

2人はお酒を飲んでいるようだった。

コップにビールだろうか、

何かお酒を飲んだ形跡がある。




い、意外だ……

優等生早苗が、まさかの飲酒…?!

樽澤さんに乗せられた?それにしても…

円香はまぁ、うん、乗せられやすいから。

仕方ない。




だけど、ばあちゃんは

火山が噴火する時みたいに

顔が赤っぽい黒、黒っぽい赤に変色していた。