夏 色 の 風





スーパーでひき肉を買って外に出ると

仁王立ちした早苗が立っていた。


正直…今一番顔を見たくなかった。


「もーっ、ひき肉買うのに

何時間必要なのよこの男はっ」


「何時間とは失礼な!

まだ20分くらいだろ!」


「歩いて5分以内のスーパーに

ひき肉買いに行くだけで20分かかる?

普通はかからないでしょ!」




むむ…っ

確かにそうだけどね。そうですけどね。

だからってお迎えに来るなよ…

俺は餓鬼か!




「はいはい…すいませんー」


ひき肉の入った袋をぶら下げ、

早苗の横を通る。

顔をしかめられたが、

今は一人にして欲しかった。




早苗が一体何者なのか…。




ばあちゃん家に来たばかりの頃は、

『胡瓜泥棒』とか『こいつ何者?』とか

警戒心を持って接していた。




だけどいつからか、

警戒心は解けて気持ちは恋愛モードに

切り替わってしまっていた。




ちゃんと聞いておけばよかったと思う。

だけどばあちゃんも早苗も

話したくない感じで、

聞ける雰囲気じゃなかった。




今更早苗が何者か知ってどうなる?

もうすぐ俺は家に帰り、

ばあちゃん家に来る機会も減るだろう。

知って得する話しじゃないし、

俺なんかが関わっていい

問題じゃないのかもしれない。




文句を言いながらついて来る早苗を

無視したまま、家に帰った。