直之が帰った翌日、

俺はいつも通りの生活に戻った。




つまり、朝起きてから

顔と歯を洗って着替え、

朝食を食べて早苗を見送り、

朝食の片付けと掃除機がけ、

洗濯物をばあちゃんと手分けしてする。

午後になったら畑仕事を手伝い、

3時ごろ切り上げておつかいに行き、

夕食までは居間でゴロゴロしてて

早苗が帰って来たらお喋りしながら

夕食を食べる。

あとはテレビを見たり、風呂に入ったり

居間で3人でおしゃべりしたり。

あとは寝るだけだ。




ばあちゃん家に来てから続いていた生活。

最初は苦痛に感じることもあったけど

今では身体が勝手に動く。慣れって怖い。




だけどその翌日。

直之が帰った2日後に、

俺の生活は乱された。




それは、畑仕事を終え

ばあちゃんにおつかいを頼まれ、

近所のスーパーにひき肉を

買いに行ったときのこと。




「君は…壱逗 亮佑?」


スーパーに向かう途中の道で

後ろから声をかけられた。

しかも、フルネームで。


俺のフルネームを知ってる奴なんて

こっちには数えるくらいしかいないし

ましてや大体がお年寄りだ。




だけどその声は若々しく、

きっと女の子ならときめく

ハスキーボイスだ。

ときめくハスキーボイスに

知り合いはいない。…多分。