起きたのは、出発ぎりぎりの時間だった。

早苗が部屋に乗り込んできて、

耳元で目覚まし時計を

けたたましく鳴らされて起きた。




直之はというと、

ケロッとした顔で朝ごはんを食べている。


…この、薄情者っ!!


さっさと寝ておけばよかった。

こんな奴ほっとけばよかった…




急いで身支度を整える。

その間に直之は、食べ終えた食器を洗い

ばあちゃんに礼を言っていた。

ばあちゃんはこれから

出掛ける用事があるので、

ここでお別れだ。




「またおいで」


優しく言ったばあちゃんに

直之はニシシと笑って応えた。




荷物を持ってバス停まで送る。

門のところまでばあちゃんが出て、

俺たちの姿が見えなくなるまで

手を振っていた。




「亮佑ぇ、お前が帰るときは

ナツばあちゃん泣くぞ」


「あっはは、有り得るわね!

ばあちゃんが泣いたら樽澤さんが

すっ飛んで来るかもよ?」




3人で大笑いする。

俺ももうすぐお別れか…と思うと

やっぱり寂しい。




バス停に着くと、樽澤さんがいて

昨日の写真を俺たちに渡してくれた。




「ぷっ、何よこの顔〜!」


俺の顔を指差して笑う早苗。

それが普段の顔なんですけど…。

『何よこの顔〜』で悪かったな!!




定時から2分程遅れて

バスがやって来る。


「じゃあなぁ〜!

また来るからなぁー!」


手を振りながら、去って行くバスに


「もう来なくていいわよー!」と早苗。


さすがに酷い…

だけど直之は大笑いして、

たくさん手を振っていた。




俺なんて帰ったらすぐ会えるのに

雰囲気なのかなんなのか、

少し泣きそうだ。




「男だろぉ!泣くな!」


樽澤さんに背中をバチンと叩かれて、

小さな悲鳴を上げる。



近くでセミの泣き声がして、

真っ青な空に入道雲が浮かぶ。

今日も暑くなりそうだ。