割れなかったスイカは結局、
早苗の手によって破壊された。
みんなで食べれるところを探し、
蚊取り線香が焚かれた縁側で
並んで食べた。
ばあちゃんが1つ食べただけで
片付けをテキパキ済ませて、
先に部屋に戻る。
早苗は1人でスイカ1玉分を食べ、
かなりご機嫌モードだ。
…夜店であんなに食べたのに。
『太るよ』
頭に思い付いた言葉を
言ったらどうなるのか
簡単に想像がつくのでやめておく。
「いやぁ、最高の夏休みだった!」
3人で片付けをしながら、
直之が笑って言う。
俺も笑顔で頷き返した。
「あら、円香にフラれて
"最高"って言えちゃうの?
実はドMとか」
仰天して早苗を見る。
なんで知ってるんだ?!
まだ言ってないのに。
さっきの話し聞いたのか?!
だ、だとしたらヤバい……
直之が余計なこと言ってたよな?
俺も乗せられてちょっと喋ったよな?
こ…これは……大ピンチ!!
一人で顔を青くしていると、
早苗は不思議そうな顔をして
「女の情報網ってすごいのよ?」
と得意げに話す。
つまり、円香に聞いたのだろう。
おそるべし、女の子ネットワーク!
ほっ、と胸を撫で下ろす。
直之は苦笑いを浮かべた。
「確かにフラれはしたけど、
まぁ、"友達"って決めたし。
それにまだチャンスが消えた訳じゃない。
これから先、どうなるか分からねーだろ」
そしていつもの、ニシシって顔。
俺も早苗も一瞬ポカンとした。
「諦めが悪いのね」
「おう!」
「すげー…尊敬しちゃう」
直之は豪快に笑って、
しかしその手は緩むことなく
俊敏に片付けを進める。
よく『口を動かすなら、手を動かせ』
って聞くけど、直之は口も手も
同時に動かせるらしい。
さすが…

