すぐに新しいスイカが用意され、
直之が挑戦する。
何事もさらさらーっとやってのける直之は
涼しい表情でスイカにヒビをいれた。
目隠しを外しながら、
わざとらしく俺の横を通る。
「参ったか。
スイカを亮佑だと思って
割ってやったぜ…うけけけ」
腹いせかよ!
しかもスイカ様に!
助けの神に!ひどい!
スイカ(俺)は割れ目から
赤い果汁が垂れている。
俺(スイカ)が血を流してる…
そう考えると本当に恐ろしい。
さっき言ってたことと、矛盾してますが!
次にばあちゃんが挑戦して、
スイカに当たったものの
割れ目が少し広がるに留まった。
「リっベーンジ!!」
俺はばあちゃんから目隠しと棒を受け取り
また早苗に回してもらう。
今度こそ、
今度こそ……
直之に出来て、ばあちゃんに出来て
俺に出来ないわけがない!
「うぉーりゃああ!」
渾身の一撃は、手応えがあった。
「でぃ、でいっ」
さらにもう2、3発打ち込む。
これでスイカも真っ二つだろう。
「よっしゃあ!」
ガッツポーズをしながら
目隠しを外すと、目の前には
真っ二つのスイカ…ではなく。
何故か、スイカより少し小さな
庭石が置いてあった。
ばあちゃんが洗濯物を干すときに
台代わりに乗っているやつだ。
「うっひゃひゃひゃ!」
「あー、もう亮佑!お腹がよじれたら
あんたのせいだからね!っくく!」
そう。
俺がスイカだと思って攻撃していたのは
この庭石だったのだ。
ばあちゃんまでもが、2人と一緒になって
お腹を抱えて大笑いしている。
俺はどうやら、スイカとは
真逆の方向に進んでしまったらしい。
…赤っ恥レベルじゃないな、これは。
しばらく3人は笑い続けた。

