夏 色 の 風





「あっははははは!」


「ぶははははっ!!」




早苗も直之もお腹を抱えて笑っている。

目隠しを外すと、俺はスイカの

真横に立っていた。




なんてこった。

ちょっと行き過ぎたし、

右に逸れてしまった。




「超気合い入れてたくせに〜!

逆に綺麗な空振りで最高だわ!」


まだ笑い続ける早苗に、

悔しくて目隠しの布と棒を渡す。


「じゃあ、早苗は出来るのか?」


早苗はフフン、と鼻で笑い

俺を見下すように言った。


「この家に来て早5年。

大好物のスイカを前にして、

空振るなんて有り得ませんから!」


勇ましく自分で目隠しをする。

キツく締めて、完全に光を遮断した。

空中を手がさ迷い、俺の手を見つけて

しがみついた。


ぁあ、スイカ割りじゃなくて

もっと違う場面でしてほしかった。


催促に従い、俺はさっきの早苗と

同じように、地面に引いてある

薄い線の上に立たせてその場で

10回回らせた。




パッと手を離すと、

早苗はよろけながらも

真っ直ぐ歩き、見事、スイカを捉えて

振り下ろした。




女の子のパワーでは、

"割れる"というより"壊す"って感じだ。




早苗は何度力を込めてスイカを

ボコボコにしてしまったので

スイカはボロボロになってしまった。




ぁあ、スイカさん

木っ端みじんなお姿に……