そのとき、お決まりのように
早苗が俺の部屋の扉を、確認もせず
やっぱりノックなしに開けた。
ぁあ、デジャヴュ。
「準備出来たよー!
…って…やっぱり…」
汚い物を見るように、
早苗は顔をしかめた。
「ちょちょちょちょっ…!
早苗!早苗さん!早苗ちゃん!早苗様!
誤解だってば!ご・か・いぃ!」
「汚らわしいぃぃぃ」
聞く耳持たず。
廊下を絶叫しながら走り去る早苗の背中に
どうしていいか分からない。
「どんまい!」
キラーン、と効果音付きで
直之は親指を立てた。
冗談じゃないってーーー!!!
着替え終わって居間に行くと、
早苗は悍ましい物を見る目で
俺たちを睨みつけた。
どうやって誤解を解けば…
頭が痛いです、本当に。
「亮ちゃん、直之くん、目を閉じて〜」
笑って強制的に黒い布で目を隠される。
突然失われた光に、俺がテンパると
俺の手を誰かが握った。
ばあちゃんの手は、もっとシワシワだし
直之の手は、硬くてごわついてる。
つまり…この手は、早苗?!
余計にテンパる。
うわ、どういう状況?!
何が何でどうなってこうなった?!
手を引かれて、俺は引かれるまま歩く。
くるりと180度回転させられて
さらに歩かされた。
「はーい!じゃあストップ!
目隠し外してー」
恐る恐る目隠しを外す。
何故か俺は縁側に立っていて、
庭にはスイカ割りセットが
準備されていた。
「これ…スイカ割り?」
「そっ!ばあちゃんの家では毎年
花火大会の日にスイカ割りをするの!
今年は4人で賑やかだね、ばあちゃん!」
早苗はさっきのことを忘れたように
ニコニコでご機嫌だった。
大好物のスイカが
目の前にあるからだろう。

