夏 色 の 風





絆創膏を貼ってもらい、

「よし完了!」と、あえて傷口を

パンっと叩かれて悲鳴を上げると

直之がぬぅっと居間に入ってきた。




「ぎゃあ!」


柄にもなく、悲鳴を上げてしまう。

早苗に笑われるわ、

樽澤さんに怒られるわ…。

直之もびっくりした顔で、

大袈裟に俺の膝に巻かれた包帯を見ていた。


「怪我したのか」


「なんでもないって、これくらい〜ぃぃ」


しれっとした顔で早苗が

包帯に巻かれた膝をツンツンする。

睨みつけると、鼻歌を歌いながら

部屋に戻って行った。




さ、最低…!

原因は早苗なのに、なのに…っ




「まぁまぁ。無事でよかったじゃん?」


ニシシ、と笑って

直之がばあちゃんと樽澤さんに

呑気な声でただいまを言う。




人事だと思って……

くそー!!




誰にぶつけていいのか分からない怒りを

とりあえず直之の背中を、

ばあちゃんたちにバレないように

思い切りつねってやった。