夏 色 の 風





その後すぐ、亮佑からメールがきて

早苗が先にナツばあちゃんの家に

帰ったことを知った。

円香は少し怒ったけど、

あの状況じゃ仕方ないと説得した。




亮佑は俺を迎えに来る余力がないので

円香が途中の道まで俺を

送ることになった。

一人で帰れないとは…情けない。




「あっちは進展する気あると思う?」


「さぁ…

亮佑は今のままで十分だって

言ってるけど。どーだかなぁ」


「あたしをフったんだから、

絶対上手くいって貰わないと。

あたしが報われない」


確かに。

深く頷いて、横腹にひじ鉄を食らった。

ったく!なんで田舎の女って

すぐ手が出るんだ?!




「そういえば…さっき、

"時間がない"とか言ってなかった?」


俺の仁平の裾を引っ張りながら、

首を傾げて俺を見上げる。


くぅー、こいつわざとか!?


胸の中から沸き上がる、

何かは分からない不思議な感情を

頑張って押し殺した。






嫌われてもいい、

そう思い悩んで告白したのに。

意外とあっさりしている円香に

ショックを受ける。




悩んで損した…




肩を落として、

なお不思議な顔をする円香に

事情を説明しつつ歩いた。

一瞬驚いた表情を見せ、すぐに

『送りに行くから』と言ってくれた。

それが寂しくもあり、嬉しくもあり。




まったく、人間てやつは贅沢だ。

次から次へ欲望が生まれる。




今は、円香の笑う横顔で我慢しよう。

だけどいつか、必ず、今度こそ。

円香をぎゃふんと言わせる男になって

迎えに来たいな、と思う。

白馬はさすがに用意出来ないけど、

白タイツはちょっと履きたくないけど

俺がお前の『王子様』ってやつに

なってやるよ!(キラン)